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ファイル暗号化 101:重要なデータの保護

サイバーセキュリティにおいては、システムへの攻撃は防ぐことはできません。ただし、こうした脅威が発生した場合に備え、堅牢なシステムを築くことはできます。

このことを理解していても全体的なアプローチを取る企業がほとんどで、システム全体とハードドライブに焦点を当てています。意味のあるステップではありますが、組織をより適切に保護するためには、もっと細かな点からセキュリティを検討する必要があります。

ここで、ファイル暗号化の出番です。個々のファイルの重要なデータのセキュリティに集中することができます。つまりハッカーがデータベースを攻撃しても、データにアクセスするには個々のファイルに侵入する必要があります。

経済的損失、訴訟、評判の低下など、データ侵害による壊滅的な影響を考慮すると、ファイルの暗号化は賢明な選択です。

ファイル暗号化について

ファイル暗号化は、ファイルを暗号文または読み取り不可能なデータに変換するセキュリティ対策です。この方法を使用すると、たとえ権限のない人がファイルにアクセスしたとしても、復号鍵がなければ内容を理解することはできません。

ファイル暗号化は、重要な情報を好奇の目から守るための強力で本質的なセキュリティ層を提供します。

ファイル暗号化の仕組み

ファイルの暗号化は、複雑な数学的アルゴリズムと暗号化キーに依存します。ファイルを暗号化する場合、暗号化方式では数式を使用して平文 (元のファイル) を暗号文に変換します。

文字またはビットの特別な組み合わせである暗号化キーは、重要なコンポーネントです。機密コードを使用すれば、権限のある担当者またはファイル受信者は暗号化されたデータのロックを解除できます。つまり、ファイルの機密性と整合性を維持しつつアクセス規制をかけられるかどうかは、暗号化キーにかかっています。

主要な概念: 暗号化アルゴリズム、鍵、および暗号

ファイル暗号化について詳しく説明する前に、次の中心的な概念を理解することが重要です。

  • 暗号化アルゴリズム:平文を暗号文に、またはその逆に変更するために使用される数学的プロセスは、暗号化アルゴリズムとして知られています。暗号化アルゴリズムは、暗号化プロセスの堅牢性とセキュリティを決定します。Advanced Encryption Standard (AES) Rivest-Shamir-Adleman (RSA) 、およびBlowfishは暗号化アルゴリズムの良い例です。
  • 暗号化キー:暗号化キーは、データの暗号化および復号化の方法を制御する特別なコードです。大きく分けて2つのカテゴリがあります。
    • 非対称キー暗号化では、暗号化用の公開鍵と復号化用の秘密鍵の2つの鍵を使用します。
    • 対称暗号化では、暗号化と復号化の両方に単一の鍵を使用します。
  • 暗号:暗号は暗号化および復号化のアルゴリズムと技術です。平文を暗号文に、またはその逆に変換する方法を決定します。ブロック暗号、ストリーム暗号、およびハイブリッド暗号は、一般的な暗号タイプです。

暗号化のアプローチ

ファイル暗号化に取り組むには、まず適切な暗号化手法を特定する必要があります。いくつかのオプションから選択できます。

  • ファイルレベルの暗号化:このタイプの保護では個々のファイルを暗号化し、きめ細かい保護が可能です。特別なセキュリティ対策が必要なファイルや、非常に機密性の高い情報が含まれているファイルがある場合に優れた手法です。個々のファイルを暗号化すると、アクセスをより細かく制御できるようになり、1つのファイルがハッキングされた場合でも、他のファイルの安全性を担保します。
  • フォルダレベルの暗号化:フォルダ全体とその中に含まれるすべてのデータの暗号化は、より包括的なアプローチです。このソリューションは、関連ファイルのグループを同時に保護する場合に有効です。フォルダを暗号化すると、構造と順序を維持しながら複数のファイルを同時に保護できるため、暗号化手順が簡素化されます。
  • ディスク全体の暗号化:ハードドライブやSSDなどのストレージデバイス全体を暗号化すると、ドライブ上のすべてのデータとファイルが自動的に暗号化され、徹底したセキュリティが提供されます。ノートパソコンなどのポータブルデバイスの場合、ディスク全体の暗号化は非常に有効です。デバイスが紛失または盗難された場合でも、保存されているすべてのデータが保護されます。

ファイル暗号化の一般的な方法

暗号化技術はそれぞれ異なる機能と利点があるので、自社に最も適したものを選択することが重要です。暗号化技術には以下のものがあります。

対称暗号化

最も一般的な暗号化方式の1つである対称暗号化では、ファイルの暗号化と復号化に同じ鍵が使用されます。ファイルの暗号化と復号化に1つの鍵を使用するのは時代遅れに思えるかもしれませんが、うまく使えば非常に効果的です。

対称暗号化では、鍵は送信者と目的の受信者の間で共有され、非公開にされます。ファイルが暗号化されると、暗号化キーによって平文が暗号文に変換されます。受信者は同じ鍵を使用して逆の手順でファイルを復号化し、元の平文を復元します。

  • 利点と課題:対称暗号化は、非対称キー暗号化に使用されるアルゴリズムよりも高速なアルゴリズムであることが多いため、パフォーマンスが高速であるなどのいくつかの利点があります。その計算効率の高さから、膨大な量のデータを暗号化するのに適しています。一方、欠点もあります。その1つは鍵管理です。暗号化と復号化の両方に同じ鍵が使用されるため、暗号化キーの機密性を維持する必要があり、受信者との安全な鍵の通信が不可欠です。
  • 例:AESは非常に効率的で安全な暗号化技術であり、現在、多くのアプリケーションのデフォルトオプションとなっています。トリプルDES (3DES) とBlowfishも広く使用されている対称技術です。

非対称キー暗号化

対称暗号化に代わるファイル暗号化としては、一般的に公開鍵暗号化と呼ばれる非対称キー暗号化があります。非対称キー暗号化では、数学的に接続された2つの異なる鍵を使用します。秘密鍵は秘密にされ、所有者だけが知っているのに対し、公開鍵は配布されます。送信者は、ファイルの暗号化中に、受信者の公開鍵を使用して平文を暗号文に変換します。受信者は秘密鍵を使用して暗号文を復号化し、元の平文にアクセスします。

  • 利点と課題:非対称キー暗号化には、特に鍵管理に関して複数の利点があります。公開鍵は一般的に配布されるため、送信者と受信者間のキー交換の安全性を確立する必要はありません。デジタル署名は、情報の正当性と完全性を確認できるもう1つの機能です。ただし、非対称キー暗号化は対称暗号化に比べて遅くなり、計算量が多くなることがよくあります。そのため、一般的には鍵交換や少量のデータの暗号化に使われます。
  • 例:RSAは、安全な通信とデジタル署名でよく使用される有名な非対称キー暗号化方式の1つです。他には楕円曲線暗号 (ECC) やDiffie-Hellmanがあります。

ハイブリッド暗号化

ハイブリッド暗号化は、対称と非対称の両方のメリットを享受したい企業にとって理想的なソリューションです。この手順では、最初にファイルまたはセッションごとに個別の対称鍵が作成されます。その後、ファイルは対称鍵を使用して暗号化され、迅速かつ効果的な暗号化が可能になります。データの暗号化には、対称鍵自体ではなく、非対称キー暗号化による受信者の公開鍵が使用されます。次に、暗号化されたファイルが暗号化された対称鍵とともに送信されます。受信者は適切な秘密鍵を持っていれば対称鍵を使用してファイルを復号化できます。

  • 利点:ハイブリッド方式は、対称暗号化と非対称キー暗号化の両方の優れた機能を兼ね備えています。対称暗号化を使用すると、大規模なデータセットを迅速かつ効果的に暗号化できます。一方、非対称キー暗号化は対称鍵の機密性を保護し、安全な鍵交換を可能にします。ハイブリッド暗号化を利用すると、両方の戦略の利点を享受しながら、それぞれの欠点や困難を個別に克服できます。
  • 例:インターネット通信を保護するために使用されるトランスポート層セキュリティ (TLS) プロトコルは、よく知られたハイブリッド暗号化技術の1つです。TLSは、安全な鍵交換を可能にする非対称キー暗号化 (RSAなど) と、データペイロードを暗号化するための対称暗号化 (AES など) の組み合わせです。もう1つの方法は、安全な電子メール送信のためのPretty Good Privacy (PGP) 暗号化標準で、これも対称暗号化と非対称キー暗号化の組み合わせです。

ファイル暗号化とフルディスク暗号化

ニーズによっては、ファイル暗号化よりもフルディスク暗号化の方が適している場合があります。どのように異なり、それぞれに何が期待できるかを理解することが重要です。

ファイル暗号化

個々のファイルまたはフォルダを暗号化すると、きめ細かいレベルの保護が提供されます。暗号化する特定のファイルまたはフォルダは自由に選択することができます。この技術を使用すると選択的な暗号化が可能になり、誰がどのデータにアクセスできるかをより詳細に制御できるようになります。このアプローチには、次の利点があります。

  • 選択的保護:暗号化するファイルを選択できるため、最も重要なデータの暗号化作業に集中できます。
  • 柔軟性:個々のファイルを暗号化すると、重要なデータのプライバシーを保護しつつ、重要度の低いファイルの共有が容易になります。
  • 効率:ファイル暗号化でドライブ全体ではなく、選択したファイルのみを暗号化します。

ただし、ファイルの暗号化には次の問題があります。

  • 管理の複雑さ:暗号化キーを管理し、特定のファイルにアクセスするために追加の管理作業が必要になる場合があります。
  • 見落としの可能性:ファイルを個別に暗号化すると、特定のファイルを意図せず脆弱な状態のままにしてしまう可能性が高くなります。

フルディスク暗号化

フルディスク暗号化は、ドライブ上のすべてのファイルを自動的に暗号化することで、デバイスに保存されているすべてのデータを完全に安全にします。この技術を使用すると、デバイスの紛失や盗難があった場合でも、暗号化されたデータの安全性は保たれます。フルディスク暗号化には、次のような利点があります。

  • 包括的な保護:ドライブ全体を暗号化すると、より高度な保護が提供され、すべてのファイルとデータが確実に保護されます。
  • シンプルさ:有効にすると、人間がファイルを選択しなくても、すべてのファイルがすぐに暗号化されます。

ただし、フルディスクの暗号化には課題があります。

  • パフォーマンスへの影響:フルディスク暗号化は常にデータを暗号化・復号化するため、システムパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 柔軟性の制限:すべてのファイルはフルディスク暗号化で暗号化されるため、ドライブ上の非機密データの共有オプションが制限される可能性があります。

ファイル暗号化の実装

さまざまな暗号化方法を理解したところで、次はファイルを暗号化する方法を理解しましょう。以下が重要な手順となります。

1. 適切な暗号化ソフトウェアを選ぶ

要件に合わせて適切な暗号化ソフトウェアを選択することが重要です。暗号化ソフトウェアを選択するときは、次の要素を考慮しましょう。

  • セキュリティ:暗号化ソフトウェアがAESやRSAのような強力な暗号化アルゴリズムを採用していることを確認してください。
  • 使いやすさ:手順を簡素化するには、直感的なユーザーインターフェイスとコントロールを備えたソフトウェアを探します。
  • 互換性:お使いのオペレーティングシステムと、よく使用するファイル形式とのプログラムの互換性を確認してください。
  • 追加機能:ファイルのシュレッディング、パスワード管理、クラウドストレージサービスの統合など、暗号化プログラムで提供可能なその他の機能も検討してください。

2. 強力な暗号化キーを生成する

ファイル暗号化の主要な要素は、暗号化キーの使用です。セキュリティを最大限に高めるには、次のガイドラインに準拠した堅牢な暗号化キーを作成します。

  • 鍵の長さ:適切な長さの暗号鍵を使用します。鍵が長いほど、セキュリティが強化されます。対称暗号化には128ビット以上の鍵長が推奨されています。非対称キー暗号化では、多くの場合、2048ビット以上の鍵長が推奨されています。
  • ランダム性:予測可能性を回避するには、信頼できる乱数ジェネレーターで暗号化キーを作成するようにしてください。
  • キー管理:暗号化キーを安全にバックアップするなど、安全な鍵管理手順を導入します。一元化された安全な鍵の保管には、鍵管理システムや安全な鍵保管庫を検討してください。

3. ベストプラクティスを採用する

暗号化への取り組みから最良の結果を得るためには、ベストプラクティスを採用しましょう。それは次のとおりです。

  • 従業員のトレーニング:スタッフメンバーに、ファイル暗号化の価値と暗号化ソフトウェアの正しい取り扱いについてのトレーニングセッションや意識向上キャンペーンを実施します。
  • 強力なパスワードを使用し、多要素認証 (MFA) を導入する:暗号化キーと暗号化ソフトウェアに、大文字と小文字、数字、特殊文字を含む強力なパスワードまたはパスフレーズを設定します。パスワードとしてよく使われる用語やフレーズは避けましょう。追加の保護を提供するには、可能な限りMFAを有効化してください。これには、指紋、スマートカード、生体認証など、暗号化キーまたはパスワードを使用した別の形式のIDの要求が必要になる場合があります。
  • ソフトウェアを頻繁に更新する:セキュリティのアップグレードやバグ修正を活用するには、暗号化ソフトウェアを最新のパッチで最新の状態に保ちます。
  • 暗号化されたファイルを安全に転送する:ファイル転送中の不要なアクセスを防ぐため、暗号化電子メールやセキュアファイル転送プロトコル (SFTP) などのセキュアな通信チャネルを使用します。
  • 頻繁に監査する:ファイル暗号化手順を確認および監査すると、潜在的な欠陥や脆弱性の特定につながります。これにより、暗号化システムの効率性が維持され、業界標準を確実に準拠することができます。
  • 最新のバックアップを維持:暗号化されたファイルを定期的にバックアップし、その整合性をチェックします。ハードウェアのエラーやデータの損失、その他の不測の事態に備えて、データの安全なバックアップをとっておきましょう。

結論

ベリタステクノロジーズは、データセキュリティおよび情報管理業界で豊富な専門知識を有し、確固とした地位を築いています。この分野における数十年の知見を活かし、最も高いセキュリティ要件に準拠したソリューション提供が可能です。

業界特有の規則やコンプライアンス基準は非常に重要であることから、企業がGDPR、HIPAA、またPCI DSSなどのコンプライアンス基準を満たすサポートができるよう当社のソリューションは開発されています。


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よく寄せられる質問 - FAQ

ファイル暗号化は、重要なデータをハッキングや不正アクセスから保護するための追加の保護層を追加するため、不可欠です。ファイルの暗号化によりデータが盗まれても、暗号化キーがなければ誰もそのデータにアクセスできません。顧客とパートナーの信頼を保護し、機密性を確保します。

個人情報や重要な情報を含むファイルはすべて暗号化します。財務情報、顧客情報、知的財産、従業員情報、また権限のない人が閲覧すると組織に損害を与えたり、プライバシー法に違反したりする可能性のあるファイルなども含まれるでしょう。

はい、暗号化されたデータは他のユーザーと交換することができます。受信者は、暗号化されたデータにアクセスするために、必要な暗号化ソフトウェアと一致する復号鍵を持っている必要があります。共有ファイルのプライバシーを保護するには、復号鍵を許可された当事者にのみ安全に配布するようにしてください。

暗号化されたファイルは暗号化キーがないと表示できないため、暗号化キーを紛失すると、取り返しのつかないデータ損失が発生する可能性があります。暗号化キーのバックアップや安全な保管など、堅固な鍵管理手順が必要です。暗号化された情報にアクセスできなくなる可能性を減らすために、鍵回復システムまたはその他のアクセスメカニズム導入を検討してください。

ファイルの暗号化は、特に暗号化および復号化操作中に、システムのパフォーマンスにわずかに影響を与える可能性があります。ただし、テクノロジーと現在の暗号化技術の向上により、パフォーマンスへの影響は多くの場合無視できる程度であり、日常業務に実質的な影響を与えることはありません。

企業や管理するデータの種類によっては、重要な情報を保護するためにファイルの暗号化が必要となる法的または規制上の制限がある場合があります。このような規制には、GDPR、HIPAA、または PCI DSS などがあります。

いいえ、パスワード保護とファイル暗号化は2つの異なる考え方です。ファイル暗号化では、暗号化アルゴリズムと鍵を使用してファイルを読み取りできない暗号文に変換します。一方パスワード保護とは、必ずしもファイルやドキュメント内容の暗号化のことではなく、アクセスを制限するためのパスワードまたはパスフレーズ設定を指すことが一般的です。ファイルを暗号化すると、適切な復号鍵がないとデータ自体が読み取りできなくなるため、セキュリティが強化されます。