オンプレミスストレージの所有コストモデルがエンタープライズクラウドストレージの価格設定の仕組みとは別物であることは周知の事実です。
さらに、クラウドストレージサービスの価格設定については、それを理解するプロセスが困惑と不満の原因となることがあります。クラウドストレージの低コスト (不確定要素であるエグレス料金を除く) に関するすべての説明から、企業にとって何が最適化をどのように判断しますか?
クラウドストレージの価格設定については、常に困惑が伴います。そこで、クラウドストレージの価格設定に関する理解を深め、何を想定すべきかをわかりやすく説明します。
実際のところ、クラウドストレージの価格設定は複雑です。そのコストはオンプレミスオプションよりも低いとは限りません。また、エグレス料金はそれほど予算的な問題にはなりません。
クラウドストレージの価格設定は複雑ですが、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) のオブジェクトストレージ製品のクラウドストレージには、その価格設定モデルがすべて同様であるというメリットがあります。そのため、クラウドストレージの価格設定の方法を理解すれば、企業のニーズに基づいてすべての主要クラウドプロバイダの費用対効果を適切に評価できるようになります。
エンタープライズクラウドストレージのコストには、認識しておくべきいくつかの不確定要素があります。
さまざまなクラウドストレージレベルを見ていきましょう。
一般に、この 3 つがストレージ層の主なカテゴリですが、さらに他のバリエーションやオプションがプロバイダからリリースされることが予想されます。
主要クラウドプロバイダでは、一部のパフォーマンス層にボリューム割引価格が設けられている場合があります (つまり、データボリュームが一定のしきい値を超えると GB 単位の月額コストが抑えられます)。ただし、ロータッチ層とアーカイブ層については定額料金のみです。例として、Microsoft 社の米国西部 2 リージョンのオブジェクトストレージ価格設定を見てみましょう。
ストレージの計算はシンプルです。Azure に 2,250 TB のデータがあり、ホット層 (600 TB)、クール層 (200 TB)、アーカイブ (1,450 TB) 層に分散しているとします。米国西部 2 リージョンで、このシナリオから予想される月額ストレージコストは以下のとおりです。
ティア |
データボリューム |
月間合計 |
ホット、最初の 50 TB (@ 0.018 ドル/GB) |
50 TB |
900.00 ドル |
ホット、次の 450 TB (@ 0.0173 ドル/GB) |
450 TB |
7,785.00 ドル |
ホット、500 TB 超 (@ 0.0166 ドル/GB) |
100 TB |
1,660.00 ドル |
クール (0.01 ドル/GB) |
200 TB |
2,048.00 ドル |
アーカイブ (@ 0.00099 ドル/GB) |
1,450 TB |
1,469.95 ドル |
13,862.95 ドル |
アーカイブ層のストレージ容量の大部分は極めて安価ですが、最大のコスト要因はパフォーマンス層のデータです。実際に、(ファイル分析とアクティビティ監査を使用して) 詳しく調べて、「ホット」層のデータの大半をコスト効率に優れた層へ移動できるかどうかを確認します。ホット層とクール層のデータの 80% を低コストのアーカイブ層へ移動できると仮定すると、コストプロファイルは大きく変化します。
ティア |
データボリューム |
月間合計 |
ホット、最初の 50 TB (@ 0.018 ドル/GB) |
50 TB |
900.00 ドル |
ホット、次の 450 TB (@ 0.0173 ドル/GB) |
70 TB |
1,211.00 ドル |
ホット、500 TB 超 (@ 0.017 ドル/GB) |
0 TB |
0.00 ドル |
クール (0.01 ドル/GB) |
40 TB |
400.00 ドル |
アーカイブ (@ 0.00099 ドル/GB) |
2,090 TB |
2,069.10 ドル |
4,580.1 ドル |
データの移動は無料ではありません。アイテムのプロパティの書き込み、読み取り、階層化、フェッチなどのアクティビティは、料金に関連付けられているクラウドストレージ操作の例です。
以下は、Azure の米国西部 2 リージョンの価格設定を使用した、ストレージ操作の料金の概要です (10,000 操作あたりの価格です)。
低ストレージコスト層のほうがアクティビティコストが高いことがわかります。
一見しただけでは、ストレージ操作料金はそれほどわかりにくいものではありません。ただし、アプリケーションがデータで何を実行しているかを正確に理解して、展開される実際の操作を把握しなければならず、モデリングしにくい場合があります。
たとえば、大規模なファイルでは複数の操作が発生します。オブジェクトがストリームを使用して書き込まれる場合、各アイテムに対して少なくとも 2 つの書き込み操作が発生します (PutBlock と PutBlockList)。アプリケーションが各オブジェクトを書き込み、その後データ整合性チェックを実行し、インデックス処理のために各オブジェクトを読み取ってから層を変更するシナリオでは、最初のシード処理だけでアイテムごとに複数の書き込み操作と読み取り操作が発生する可能性があります。
トランザクション数から計測する操作コストを使用して、問題のワークロードを想定した場合のコストの違いを示す 2 つの例を見てみましょう。
(注: Veritas Alta™ SaaS Protection は、前回のバックアップジョブ以降に変更された内容のみをバックアップすることで、ストレージ操作と帯域幅使用の両方を最小限に抑えます。)
大規模なファイルワークロードには、バックアップ、動画、LIDAR 画像などがあります。200 TB と仮定し、平均ファイルサイズが 1 GB、オブジェクト数が 200,000 アイテムとします。この例では、クラウドストレージへのシード処理のために各オブジェクトで 4 つの書き込み操作と 2 つの読み取り操作が発生すると想定します。
ホット層を仮定した場合のストレージ操作コストは以下のとおりです。
ホット層 |
オペレーション |
合計 |
書き込み操作 (@ 10,000 あたり 0.065 ドル) |
800,000 |
5.20 ドル |
読み取り操作 (@ 10,000 あたり 0.005 ドル) |
400,000 |
0.20 ドル |
5.40 ドル |
クール層を仮定した場合のストレージ操作コストは以下のとおりです。
クール層 |
オペレーション |
合計 |
書き込み操作 (@ 10,000 あたり 0.13 ドル) |
800,000 |
10.40 ドル |
読み取り操作 (@ 10,000 あたり 0.013 ドル) |
400,000 |
0.52 ドル |
10.92 ドル |
明らかに、上記の料金はごくわずかです。しかし、小規模のファイルで構成される別のワークロードではどうでしょうか。
小規模なファイルワークロードには、IoT (モノのインターネット)、ゲノミクス、メールなどがあります。今回も同じ 200 TB と仮定しますが、平均ファイルサイズは 150 KB、オブジェクト数は 1,431,655,765 アイテムとします。クラウドストレージへのシード処理のために各オブジェクトで同じ 4 つの書き込み操作と 2 つの読み取り操作が発生すると想定します。
ホット層を仮定した場合のストレージ操作コストは以下のとおりです。
ホット層 |
オペレーション |
合計金額 |
書き込み操作 (@ 10,000 あたり 0.065 ドル) |
5,726,623,060 |
37,223.05 ドル |
読み取り操作 (@ 10,000 あたり 0.005 ドル) |
2,863,311,530 |
1,431.66 ドル |
38,954.71 ドル |
クール層を仮定した場合のストレージ操作コストは以下のとおりです。
クール層 |
オペレーション |
合計金額 |
書き込み操作 (@ 10,000 あたり 0.13 ドル) |
5,726,623,060 |
74,446.10 ドル |
読み取り操作 (@ 10,000 あたり 0.013 ドル) |
2,863,311,530 |
3,722.30 ドル |
78,168.40 ドル |
この 2 番目の例の数値は、予算重視の企業にとっては少し不安になるでしょう。
しかし、オブジェクト数の多いワークロードを避けるには、低コスト層による長期的なストレージの節約が最終的には有利に働くことを覚えておいてください。
試算して、初期のシード処理の急上昇の採算が取れるまでにどのぐらいかかるかを確認する必要があります。ほとんどのビジネスケースでは、初期の操作コストにかかわらず、ワークロードをオンプレミスインフラからクラウドストレージサービス、特に低コスト層へと移動することには、長期にわたるコスト上の魅力的なメリットがあります。
ベリタスのソリューションである Veritas Alta SaaS Protection では、インラインでの重複排除や圧縮など、数多くの戦略を使用して顧客のアクティビティコストを軽減しています。一部のシナリオでは、アーカイブに適した小規模オブジェクトのポリシーベースのコンテナ化によってオブジェクト数を大幅に削減します。
一般に、SaaS データ保護では、分析とポリシーに基づく階層化を適用し、小規模オブジェクトをパフォーマンス層に残しながら、あまりアクティブではない大規模オブジェクトを低頻度またはアーカイブ層へ自動的に移動することで、クラウドストレージのフットプリントを最適化します。このアプローチにより、ストレージコスト効率を最大限に高めながらストレージ操作を最小限に抑えることができます。
エグレスには以下の 2 つの種類があります。
データの取得は、ストレージレベルのデータ転送コスト要因です。一方、クラウドリージョンからのデータのダウンロードは、ネットワーク帯域幅のデータ転送コストです。ネットワークエグレスコストについては少し後で説明しますが、幸いなことに、ストレージレベルのデータ転送コストはごくわずかです。
取得データ転送コストが月に 20 ドルを超えることはめったにありません。たとえば、ホットから任意のデータ量にアクセスしてもデータ転送コストは発生しません。クールから取得する場合、5 TB へのアクセスで約 50 ドル、アーカイブからアクセスする場合は 100 ドルです。
(注: Veritas Alta SaaS Protection はアーカイブ層を使用しません – ベリタスのソリューションでは、より高いストレージパフォーマンスが必要でした。)
Azure の米国西部 2 の価格例を続けると、イングレスデータ転送コストがないことがわかりす。特定のストレージ層でのデータ取得には、GB 単位のわずかな料金がかかります。
(注: Azure コストはリージョンによって異なりますが、Veritas Alta SaaS Protection のコストはすべてのリージョンで同じです。)
業界アナリストや専門家から、あまりに頻繁に、クラウドストレージは安価だがエグレスコストが隠れたリスクであると聞きます。ストレージハードウェアベンダーは、クラウドストレージを回避する理由としてエグレスコストをよく強調します。
実際、エグレス料金は、データがインフラに保存されているときに考えることではありません。
ただし、交渉決裂の要因であると仮定する前に定量化することで、エグレス帯域幅コストを大局的に把握する必要があります。
まず、エグレスデータ転送の価格設定の仕組みを見てみましょう。
(表示されている価格は、Microsoft Premium グローバルネットワーク経由でのネットワークトラフィックのルーティングに基づいています。このオプションを使用しない場合はコストが低くなりますが、価格体系は同様です。)
ストレージと同様、Azure のデータエグレス料金はリージョンによって異なります。コストは、ボリューム割引され、データサイズ (GB 単位) に基づいています。
少量のデータでのエグレスはわずかなコスト要因であることがわかります。ただし、月に10 TB を超えるダウンロードは注目に値します。
注意する点は、ほとんどのデータは、完全に非アクティブではないとしてもロータッチであることです。
(注: ベリタスによってホストされる Veritas Alta SaaS Protection の配備モデルを選択する場合、エグレスのアドオン料金は表示されません。)
Veritas Alta SaaS Protection にはストレージプラットフォームのファイル分析が組み込まれているため、お客様は取得アクティビティを適切に可視化できます。ほとんどすべてのケースで、毎月アクセスされているのはデータセットのごく一部です。たとえば、あるお客様は、Veritas Alta SaaS Protection のバックアップとシームレスな階層化を高トランザクションのオンプレミスアプリケーションの背後で使用しています。エグレスは月間約 1 TB で、NSP でのストレージフットプリントの 1.4% に相当します。しかし、これはハイエンドのケースです。よく見られるのは、次のようなシナリオのお客様です。ストレージには 500 TB を超えるデータがあり、毎月の平均エグレスはわずか 300 ~ 500 GB (データセット全体の 0.0005% ~ 0.001%)。
実際、エグレスは、オンプレミスの複数の大規模ファイルサーバーをクラウド階層化する場合であっても、通常は小規模です (最近のデータはローカルでキャッシュされ、ユーザーは 30 日以上経過したものにはめったにアクセスしないため)。
ただし、エグレスコストが中心になる状況があります。1 つは、ストレージアカウントの別のクラウドリージョンへの分離クラウドバックアップコピーを作成する場合です。ストレージに 100 TB あり、geo バックアップを有効化する場合、1 回限りの 50 ~ 60 TB (重複排除および圧縮後) のエグレスが発生する可能性があります。
規模に応じたエグレスコストを理解することは適切ですが、実際には、geo 冗長ストレージレプリケーションまたはバックアップにおいて、またはめったに発生しませんが外部サービスへのデータセットのレプリケーションを必要とする構成においてのみ要因と見なします。(Veritas Alta SaaS Protection の追加のデータバックアップオプションの使用など。) それ以外の場合、ほとんどの企業ではストレージ内のデータのごく一部しか操作しないため、通常、エグレスコストはわずかなものになります。
予算を計画する際に注意すべきその他のクラウドストレージの詳細を以下に示します。
アーカイブストレージ層の価格設定は極めて低く、場合によっては、月間で GB あたり 10 分の 1 ペニー未満です (つまり、0.00099/GB/月)。ただし、これらの層は、長期間にわたって保管する必要があるデータ用であり、取得する可能性はほとんどありません。
データをリカバリできますが、アーカイブ層から行うには、データを「クール」または「低頻度アクセス」層まで移動します。注意すべき点は、初回の書き込み後の指定期間内のリハイドレートはアーカイブからの早期アクセス/削除と見なされ、コストペナルティが伴うことです。
たとえば、AWS では、アーカイブ層に配置されるデータには最小 90 日の保管期間があり、この期間が過ぎる前にアクセスすると、残りの日数のストレージ料金と同額の日割り料金が発生すると定められています。同様に、Microsoft Azure のアーカイブ層にもこの概念がありますが、早期アクセス料金が適用されなくなるまでの最小保管期間は 180 日です。
したがって、ロータッチまたはコールドの長期保存ワークロードのみをこれらのアーカイブ層に保存してください。早期アクセス/削除料金を軽減できます。
(注: これらの高いアクセス料金は、アーカイブ層を使用しない Veritas Alta SaaS Protection では問題となりません。)
クラウドプロバイダはストレージサービスへのデータの移行を魅力的なものにしたいと考えているため、ストレージレベルでもネットワークレベルでもイングレスデータ転送コストはかかりません。
ローカルの冗長ストレージで得られる低価格に重点を置くことは簡単です (この投稿で参照されている価格はすべて、冗長性がローカルのみの場合のものです)。ただし、データの地理的なレプリケーションまたはバックアップが必要な場合は、コストが増加するため、適切に計画する必要があります。geo 冗長性を計画するときは、リージョンによって異なる geo レプリケーション帯域幅コストを含める必要があることに注意してください (通常、GB あたり約 0.02 ドル)。
主要クラウドプロバイダのデータセンターは数多くの国にあります。つまり、複数の通貨でコストを管理しています。同じクラウドプロバイダの特定のストレージサービスの価格がリージョン間で異なります。場合によっては、大きく異なります。さらに、同じプロバイダのすべてのクラウドリージョンが必ずしも同一ではありません (つまり、ストレージサービスが特定のエリアでは利用できない場合があります)。
あるリージョンで利用できる価格とサービスが別のリージョンでも同じであると仮定しないことをお勧めします。予算計画を提出する前に、常に時間をかけて地域の価格を確認してください。
(注: ベリタスによってホストされる Veritas Alta SaaS Protection の配備では、コストはすべての Azure リージョンで同一です。)
Veritas Alta SaaS Protection のお客様によるホスティングオプションの使用をご検討中の場合、何が必要か、どのぐらいのコストになるかの見極めをベリタスがお手伝いします。シナリオのコスト見積もりをご希望の場合は、お問い合わせください。ベリタスの価格計算ツールを使用すると、クラウドストレージ費用をモデリングし、複数年にわたるサブスクリプションコストを正確に示すことができます。