Cluster Server 7.4.3 管理者ガイド - Linux
- 第 I 部 クラスタ化の概念と用語
- Cluster Server の概要
- Cluster Server について
- クラスタ制御のガイドラインについて
- VCS の物理コンポーネントについて
- VCS の論理コンポーネント
- クラスタトポロジーについて
- VCS 設定の概念
- Cluster Server の概要
- 第 II 部 管理 - VCS の利用方法
- VCS ユーザー権限モデルについて
- コマンドラインによるクラスタの管理
- コマンドラインでの VCS の管理について
- VCS ライセンスのインストールについて
- LLT の管理
- VCS の起動
- VCS エンジンと関連プロセスの停止
- VCS へのログイン
- VCS 設定ファイルの管理について
- コマンドラインによる VCS ユーザーの管理について
- VCS のクエリーについて
- サービスグループの管理について
- リソースの管理について
- リソースタイプの管理について
- クラスタの管理について
- VCS でのアプリケーションとリソースの設定
- VCS Simulator を使った VCS の動作の予測
- 第 III 部 VCS 通信と操作
- クラスタの通信、メンバーシップ、データ保護について
- クラスタ通信について
- クラスタメンバーシップについて
- メンバーシップアービトレーションについて
- データ保護について
- I/O フェンシングを使う VCS 操作の例
- I/O フェンシングを使わない、クラスタメンバーシップとデータ保護について
- I/O フェンシングを使わない VCS 動作の例
- I/O フェンシングの管理
- vxfentsthdw ユーティリティについて
- vxfentsthdw の -c オプションを使ったコーディネータディスクグループのテスト
- vxfenadm ユーティリティについて
- vxfenclearpre ユーティリティについて
- vxfenswap ユーティリティについて
- コーディネーションポイントサーバーの管理について
- IPv6 またはデュアルスタックをサポートする CP サーバーの設定について
- ディスクベースとサーバーベースのフェンシング設定間の移行について
- VCS の動作の制御
- リソース障害時の VCS の動作
- サービスグループレベルでの VCS 動作の制御について
- リソースレベルでの VCS 動作の制御について
- ストレージ接続消失時の VCS 動作
- サービスグループワークロード管理
- ワークロード管理を示した設定例
- サービスグループの依存関係のロール
- クラスタの通信、メンバーシップ、データ保護について
- 第 IV 部 管理 - 高度な操作
- VCS イベント通知
- VCS イベントトリガ
- イベントトリガのi使用
- イベントトリガの一覧
- Virtual Business Service
- 第 V 部 Veritas High Availability 設定ウィザード
- 第 VI 部 ディザスタリカバリ用のクラスタ設定
- クラスタの相互接続 - グローバルクラスタの作成
- コマンドラインによるグローバルクラスタの管理
- RDC の設定
- キャンパスクラスタの設定
- 第 VII 部 トラブルシューティングおよびパフォーマンス
- VCS パフォーマンスに関する注意事項
- クラスタコンポーネントの処理速度に対する影響
- クラスタ操作の処理速度に対する影響
- システムパニックのときの VCS の処理速度に関する注意事項
- スケジュールクラスと優先度の設定について
- VCS エージェントの統計機能
- VCS のチューニングパラメータについて
- VCS のトラブルシューティングおよびリカバリ
- VCS メッセージログ
- VCS エンジンのトラブルシューティング
- LLT(Low Latency Transport)のトラブルシューティング
- GAB(Group Membership Services/Atomic Broadcast)のトラブルシューティング
- VCS の起動に関するトラブルシューティング
- systemd ユニットサービスファイルの問題のトラブルシューティング
- サービスグループに関するトラブルシューティング
- リソースに関するトラブルシューティング
- サイトのトラブルシューティング
- I/O フェンシングのトラブルシューティング
- フェンシングの起動時にすでに発生しているスプリットブレイン状態が報告される
- CP サーバーのトラブルシューティング
- VCS クラスタノードでのサーバーベースのフェンシングのトラブルシューティング
- コーディネーションポイントのオンライン移行中の問題
- 通知に関するトラブルシューティング
- グローバルクラスタのトラブルシューティングとリカバリ
- ライセンスに関するトラブルシューティング
- ライセンスのエラーメッセージ
- セキュア設定のトラブルシューティング
- ウィザードベースの設定に関する問題のトラブルシューティング
- [Veritas High Availability]ビューの問題のトラブルシューティング
- VCS パフォーマンスに関する注意事項
- 第 VIII 部 付録
優先フェンシングのしくみ
I/O フェンシングドライバは、コーディネーションポイントを使って VCS クラスタでのスプリットブレインを防止します。 ネットワーク分割時に、各サブクラスタのフェンシングドライバはコーディネーションポイントを獲得しようと競争します。 コーディネーションポイントの大部分を獲得するサブクラスタが生存する一方で、フェンシングドライバが他のすべてのサブクラスタのノードでシステムパニックを引き起こします。 デフォルトでは、コーディネーションポイントを獲得するための競争時に、フェンシングドライバは、最大数のノードが含まれるサブクラスタを優先します。
このデフォルトの獲得時の優先動作では、任意のノード上のオンラインであるアプリケーショングループまたは任意のサブクラスタのシステムの処理能力は考慮されません。 たとえば、2 ノードのクラスタがあり、1 つのノードでアプリケーションを設定しており、もう 1 つのノードはスタンバイノードであるとします。 ネットワーク分割が発生し、スタンバイノードが競争に勝った場合、アプリケーションが実行されているノードではパニックが発生し、VCS ではスタンバイノードでアプリケーションをオンラインにする必要が生じます。 この動作により、中断が発生し、生存するノードにアプリケーションがフェールオーバーされ、再起動されるまでの時間がかかります。
優先フェンシング機能を使用することで、フェンシングドライバが生存するサブクラスタを判断する方法を指定できます。 優先フェンシングソリューションでは、ノードの重みと呼ばれるフェンシングパラメータを利用します。 VCS は、特定の VCS 属性を使ってユーザーが提供するオンラインアプリケーション、システムの処理能力、およびサイトの優先設定の詳細情報に基づいてノードの重みを計算し、フェンシングドライバに渡してコーディネーションポイントの獲得競争の結果に影響を与えます。 競争時に、競争するノードはローカルサブクラスタと離脱するサブクラスタのすべてのノードの重みを集計します。 離脱するサブクラスタの(ノードの重みの)合計の方が大きい場合、このサブクラスタの競争するノードは、コーディネーションポイントの獲得競争を遅らせます。 したがって、重要なシステムまたは重要なアプリケーションがあるサブクラスタが競争に勝ちます。
優先フェンシング機能では、次の競争のポリシー値を取るクラスタレベルの属性 PreferredFencingPolicy が使われます。
Disabled (デフォルト): 優先フェンシングは無効です。
PreferredFencingPolicy 属性の値を Disabled に設定すると、VCS は競争ポリシーに基づいてカウントを設定し、ノードの重みの値を 0 にリセットします。
System: サブクラスタ内のシステムの処理能力に基づきます。
アーキテクチャ、CPU 数、またはメモリという観点で、あるシステムが他のシステムより処理能力が高い場合、このシステムがフェンシングの競争において優先されます。
PreferredFencingPolicy 属性の値を System に設定すると、VCS は、システムレベルの属性 FencingWeight に基づいてノードの重みを計算します。
System attributesを参照してください。
Group: サブクラスタ内の優先度が高いアプリケーションに基づきます。
フェンシングドライバは、任意のサブクラスタのノード上のオンラインであるサービスグループを考慮に入れます。
ネットワークパーティションでは、I/O フェンシングによってコーディネーションポイントの競争に参加するすべてのノード上で VCS エンジンが実行しているかどうかが特定されます。 すべてのノードで VCS エンジンが実行している場合は、優先度が高いサービスグループがあるノードがフェンシング時に優先されます。
ただし、優先度が高いサービスグループを持つノード上の VCS エンジンインスタンスが何らかの理由で強制終了されている場合は、I/O フェンシングはそのノードの優先フェンシングノードの重みをゼロにリセットします。 I/O フェンシングは、メンバーシップアービトレーションにそのノードを優先しません。 その代わり、優先度の低いサービスグループがあるノードでも、VCS エンジンが実行しているノードを優先します。
VCS エンジンと I/O フェンシング間に同期がない場合は、VCS エンジンが実行していなくても優先度が高いサービスグループを持つノードが優先されます。 つまり、優先されなかったノード上のサービスグループが、生存するノードにフェールオーバーできない状況であるということです。
PreferredFencingPolicy 属性の値を Group に設定すると、VCS は、アクティブであるそれらのサービスグループのグループレベルの属性 Priority に基づいてノードの重みを計算します。
サービスグループ属性を参照してください。
Site: サブクラスタ内のサイトに割り当てられた優先度に基づきます。
クラスタ属性の SiteAware を 1 に設定した場合にのみ、サイトポリシーが利用できます。 VCS は優先度が高いサイト内のノードに高い重みを設定し、優先度が低いサイト内のノードに低い重みを設定します。 ノードの累積した重みが一番高いサイトが優先サイトになります。 サイト間のネットワークパーティションでは、コーディネーションポイントの獲得競争で優先されたサイトのノードを持つサブクラスタを VCS は優先します。
サイト属性を参照してください。
優先フェンシングポリシーの有効化と無効化を参照してください。